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官僚からスタートアップに転身!カワイ過ぎる電気自動車で未来を創る【rimOnO(リモノ)】~輝き人 第34回~

株式会社rimOnO 代表取締役社長 伊藤 慎介 さん

プロフィール

1999年、京都大学大学院工学研究科修了。同年、通商産業省(現・経済産業省)に入省。自動車、IT、エレクトロニクス、航空機などの業界で、いくつもの国家プロジェクトに携わる。2014年7月に退官し、同年9月、有限会社znug design(ツナグデザイン)代表でプロダクトデザイナーの根津孝太氏とともに、株式会社rimOnOを設立。

事業内容

株式会社rimOnO(リモノ)

「のりもの(Norimono)」からNoをなくして「リモノ」。全長2.2m×全幅1.0m×全高1.3m、車両重量約320kg、布でできていて着せ替え可能、スローに街中を走るための超小型電気自動車「rimOnO」の開発に取り組むベンチャー企業。2016年5月に試作車を完成。2017年後期、台数限定で市販化する予定。

世界を席巻していた日本の“ものづくり”への憧れ。それを支えたくて選んだ官僚の道だった。

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●伊藤さんは元経産省官僚。2年前に独立され、現在ベンチャー企業の代表をなさっています。異色の経歴という表現がぴったりな気がしますが……。

父の海外赴任で9歳のときから6年間ほどアメリカで暮らしました。当時(80年代後半)の日本は、エコノミックアニマルという見方をされ不評を買っている部分もありましたが、一方では、メイドインジャパンの家電やクルマが世界で輝きを放っていました。アメリカのあちこちで日本製品の看板を見かけましたね。父は、日本が世界のものづくりを牽引(けんいん)していたころの電機メーカーの会社員でした。そういう環境にいたことで「プロダクトの開発を通して日本の産業や文化を世界に発信し、日本社会に貢献する」、そういう仕事にあこがれるようになったんだと思います。そこで、エンジニアになるべく工学部に進んでみたものの、研究や開発は性に合わないと感じて人と直接関わることが出来て日本のものづくりや産業支援ができる通産省(現・経産省)に入省しました。

●15年お勤めされたわけですから水は合っていたんですよね。辞めようと思ったきっかけは何だったんですか?

そうですね、経産省で出会えた人も仕事も大変面白かったですよ。特に、最初に配属された課の上司はユニークで、「前例があるから判断を間違えるんだ。国家公務員は身分保証があるから無茶できるんだぞ。前例なんかに囚われずにどんどん行け」と言われ、国家公務員の典型的なイメージとは全く異なる薫陶(くんとう)を受けました(笑)。それで私自身も、優秀な上司や先輩たちの背中を見ながらさまざまな国家プロジェクトを積極的に立ち上げていきました。

ただ、お役所の通例で約2年ごとに人事異動させられてしまうことなど、国家プロジェクトには大いに問題があると感じるようになりました。たとえば、自動車用バッテリーの技術開発プロジェクトを立ち上げても、まず最初に私自身が異動を余儀なくされ、その時に一緒に思いを共有した企業の担当者もしばらくするといなくなって……という状況に陥る。加えて、お金の匂いがすれば、そのプロジェクトにそれほど興味がなくても相乗りしたがる企業が現れたり。実際にプロジェクトを動かしていくメンバーから熱量の高い発起人的な人々がいなくなっていくと、当然、その事業は中途半端なものになっていきます。そのジレンマを何度も味わい、このままで本当にイノベーティブなことが達成できるだろうかと悩むようになっていきました。

退職を決定づけた工業デザイナーとの出会い。スカイプで「片手間ではできないよ」言われ……。

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●共同経営者の根津孝太さんと出会ったのがそんなふうに悶々(もんもん)としていたころだとか。

たまたまテレビで、彼がデザインした電動バイク「zecOO(ゼクウ)」を見たんです。1,000万円くらいするのに、中東のドバイで展示したところ即、売れたという。私自身はバイクもクルマもそれほど関心がなかったんですが、小さな工場と一緒になって作り上げたという逸話も含め、こんなカッコいいバイクを作る人がいるんだと興奮しました。“この人に会いたい”という衝動に突き動かされてコネクションを探っていたら、経産省の後輩がつないでくれました。

その後、彼が案内してくれたのは彼がトヨタのためにデザインした「Camatte(カマッテ)」という子ども向けのコンセプトカーです。チャイルドシートやシートベルトに縛り付けられていてクルマに乗るというと苦痛のイメージしかない子供たちに対して、自ら運転できる体験をしてもらうためのコンセプトカーなのですが、そのコンセプトもさることながら、その可愛らしいデザインと肩を寄せ合って座る狭さにインパクトを受けました。

根津は電動バイクのようなカッコいいものだけではなくて、カワイイものも得意なんです。アフタヌーンティーのオリジナルランチボックスでグッドデザイン賞も取っています。そのカワイイデザインができることに大きな可能性を感じたんです。

技術が進化すると、デザインはミニマムで無機質になりがち。未来の絵って銀色のイメージですよね。でも本当にみんなそれを求めているのかと言われれば、私は懐疑的なんですよね。“カワイイ”や“懐かしい”といった人間らしい温かみのある価値を前面に出し、その裏に最新のテクノロジーを活用したものを提案していけたらいいなと思っていたものですから、「カッコいいものは違う会社でやって、こっちではカワイイものを作りましょう!」と2014年2月頃のスカイプで根津にそう持ちかけました。

その時、根津からは「本気でやるのであれば片手間ではできないですよ」と詰め寄られました。おかげで、何年も前からの悩みにすっぱり区切りがついて役所を辞めて起業することになりました。

●辞めることへの不安はなかったんですか?

辞めることの不安はなかったですが、辞めてからの不安は少しありましたね。最初は、政府がやっているベンチャーのための経済支援を受ければ全く問題ないと思っていたんです。書き方のコツもわかっているつもりだったし、自信もあったんですが、あっけなく一次の書類審査で落ちました(苦笑)。その結果、貯金を切り崩すような生活になって初めて不安になりましたが、その後、少しずつお仕事もいただくようになって持ち直しました。

起業して自由度が上がったことで、自分の裁量で時間のマネジメントができ、プロジェクトに丸ごと関われる。私にとっては、それが一番ワクワクすることですね。最初に根津が「鉄や樹脂のクルマだと代わり映えしないから、布のクルマにする」と言い出したとき、内心では「大丈夫かな」と心配になりましたが、テント生地メーカーさんが持ってこられた生地のカタログを見た瞬間に「これならありだ」と直感的に思ったんです。そんなふうに、メーカーさんとの出会いがプロダクトの方向性を決めたり、商品のあり方を決定づけていく、こういう経験がなんとも面白いですね。

私や根津だけではなく、このクルマ作りに関わっているすべての人たちが世の中を変えようという思いを持っていて、その集大成として実際のプロダクトができあがっていく。こうした手応えは、官僚時代には全くなかったことです。

大事にしてきた出会いやつながりに突破口がある。

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●それにしてもかわいらしいオフィスですよね。リモノと同色の家具や小物を使ったインテリアになっていて、仕事場で過ごす時間が楽しくなりそうです。

ありがとうございます。築50年の古いビルをリノベーションしたオフィスを借りました。内装を業者に頼むお金など全くなかったので、妻とふたりでDIYですよ。自宅から余っていた家具を持ち込み、棚などはホームセンターで材料を買ってきて手作りしました。靴を脱ぐオフィスにしたのも、リビングっぽい雰囲気にしたのも、1日の仕事が終わるころにはそのまま自然発生的に人が集まり、コミュニケーションしたいと思えるような空間にしたかったからです。

●リモノのような可能性を秘めた新しいクルマが生まれるのもうなずけます。

電気自動車とガソリン車の違いは、騒音と排気ガスと熱が全くでないことです。より人に近いところに近づけるので、極端なことを言えば部屋の中に停めてしまうことも可能です。ということは、たとえば病院の建物の中でお年寄りや患者さんが乗り降りする、ショッピングモールの中に車ごと入っていく、といったようなことができるわけです。仮に全てのクルマが電気自動車になれば、騒音や排ガスが一切なくなるので、オープンカフェやオープンオフィスが当たり前となります。そうなれば街の雰囲気は大きく変わりますよね。そういう我々のイメージに共感して熱いメッセージをいただくこともあって、それが僕らのモチベーションになっていますね。

●最後に、この記事を読む20代の転職希望者にメッセージをお願いします。

役人時代に感じたのは2~3年ごとにポストが変わってしまうことで成果が生み出せないことの歯がゆさです。その反動もあるのかもしれませんが、私はしがみついてでもやり通す気で起業しました。転職でも、そのくらいの覚悟は大事だと思います。そうではなくて、本気でやりたい仕事を探している最中だったとしても、「いまやっている仕事は本命ではないから」という気持ちで、人間関係も仕事の内容も適当にやることだけは絶対にやめるべきです。そのことについては強く主張したいです。自分もそうでしたが、本当にやりたいこと、やるべきことを誰が与えてくれるか、どのタイミングでそれが見つかるかは分からないものです。でも、真剣に取り組んでいるとそういう出会いはどこかで必ず生まれてきます。そのことだけは皆さんにどうしてもお伝えしたいですね。

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著者情報

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三浦 天紗子
ライター・ブックカウンセラー
東京都生まれ。女性誌、文芸誌を中心に、インタビュー、文芸、医療、ビジネスコンテンツ関連の執筆、編集を務める。
『anan』『CREA』『Domani』などでBOOKやCOMICのページを担当。
著書に、『そろそろ産まなきゃ 出産タイムリミット直前調査』(CCCメディアハウス)『震災離婚』(イースト・プレス)などがある。