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【株式会社カブク】デジタル技術を活用し、ワンクリックで「ものづくり」ができる世界を実現したい。~輝き人 第32回~

株式会社カブク 代表取締役 稲田 雅彦 さん

プロフィール

1982年、大阪府生まれ。2009年、東京大学大学院修了。大学院在学中にはAIの研究に従事するかたわら、AIや3Dインターフェースを用いてメディアアート活動を行う。同年、博報堂に入社。さまざまな業種の新規事業開発に携わる。カンヌライオンズほか、受賞歴多数。2013年、株式会社カブクを設立。現在に至る。共著に『3Dプリンター実用ガイド』(日系BP社)がある。

事業内容

株式会社カブク

「ものづくりの民主化」をテーマに、産業用3Dプリンターなどを使ったデジタル製造技術をだれもが活用できるようにしたマーケットプレイス「Rinkak Marketplace(リンカクマーケットプレイス)」と、3Dプリンターで製造する工場向けのクラウド基幹業務クラウドサービス「 Rinkak 3D Printing  MMS」を運営。

Rinkak Marketplaceは、アクセサリーや雑貨などを個人のアーティストがプロダクトとして売買できるマーケットプレイスとしての事業。さらに、トヨタの1人乗り電気自動車「i-ROAD」のカスタマイズサービス、ロフト店舗で提供する3D撮影から3D記念写真を作るサービス「rinkak 3Dフィギュア・ソリューション」など、企業とのコラボも話題になった。

ワンクリックで、何でも作れる社会にする。そこから次のトヨタ、パナソニックが生まれる。

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●カブクさんのサービスのひとつ、「Rinkak Marketplaceを拝見しますと、3Dを活用したクリエーションの壮大な可能性を目の当たりにした気がします。

2009年に家庭用の3Dプリンターの特許が切れて、家庭用3Dプリンターの値段が一気に1/100くらいになりました。次いで、産業用3Dプリンターも徐々に特許が切れてくるタイミングが来て、生産工程のデジタル化、オートメーション化を大幅に進めてコストを最小化する「インダストリー4.0」、最近は「IoT(アイオーティー)化」とも呼ばれていますが、その大きなうねりが起こり始めるのを感じていました。

海外では産業用3Dプリンターなどを活用した医療や航空などの小ロットの部品や製品がどんどんデジタルで製造されています。日本は、デジタルものづくりの世界では立ち後れています。それは、そうした土台になるような仕組みがないからだと思ったんですね。将来的には、デジタルデータから、すべてのものづくりが可能になると僕は考えています。それならばと、ワンクリックで国内外の個人・法人・工場を結び、ものづくりができる世界、そうすることでものづくりの裾野が拡がる、ものづくりの民主化を実現したくて起業を決めました。

●「ものづくりの民主化」の大きな流れが来ていると、稲田さんは多くのインタビューで語っています。その結論に至るまでには、起業に際してのアイデアもいろいろ練ったんですよね?

単体のプロダクトについては、それこそアイデア100本ノックして考えました。サーフィンで使えるカメラみたいなGoProの様なアクションカメラ系とか。でもそれだけで地元や社会に貢献できるのか、インパクトは与えられるかと考えると、ものづくりのインフラ(基盤)をつくることがベストなのではと、プラットフォームへの発想へつながっていったんです。

社会的な意義と、自分たちがやる意義。そのどちらにも通じる事業を創りたかった。

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●稲田さんの経歴を拝見すると、かなりフィールドが広いですよね。10代のころにはバンドを掛け持ち、DJもやっていたそうですし、大学では電子工学を学んで、大学院ではAIを研究。機材を自作して、AIに自動作曲させてみたり。新卒で博報堂に入社されたのはなぜですか?

確かに学生時代は、アーティストとしての領域とエンジニアとしての領域を混ぜたような活動をごちゃっとしていましたね(笑)。もともとは海外の音大に行きたいと思っていたのですが、奨学金が下りずに断念。じゃあ楽器でも作ろうかなと電子工学を学びました。自分でデバイスやソフトを作ったりして。大学院では、ちょうどメディアアートが盛り上がってきたころだったので、自作のデジタルな機材を使ってCDを出したり、海外でメディアアートのライブしたり。かなり音楽にものめりこんでいたので、楽器メーカーや電機メーカーへの進路も考えましたが、ちょうど広告業界が、デジタルに舵を切っていたころでした。AIやビックデータなどは、自分が学んできたことと重なる領域でもあり、ベンチャーと組んでサービス開発や事業開発を手がけるクリエイディブインダストリーの仕事は面白そうだと。その領域に積極的だった博報堂に決めました。

メディアアートの領域は、企画からプログラミング、デバイスを作るところまで一気通貫で全部手がけるケースが多いんです。メディアアートではないですが、デジタルマーケティング、デジタルクリエイティブの領域は、自分の出自とか、興味や得意な領域とすごく合っていました。

●博報堂は5年ほどで退社され、起業に踏み切りました。何か心境の変化があったんでしょうか。

博報堂でも新規事業開発などインキュベーションの現場にいたので、自分のやりたいことはできていました。起業ではなく、社内ベンチャーを立ち上げるという手もあったと思います。最終的には、中でやるのと外でやるのと、大きな山を登れるのはどちらかと全体最適を考えたら、起業だったんです。

●“大きな山”というのは?

司馬遼太郎や池井戸潤の小説が好きなんです。1人か2人の有志でも、中小企業でも、壮大な目標を掲げて、大組織や大企業に引けを取らない社会的な意義がある仕事に血がわきます。そういうのって、高い山を多様なバックグラウンドを持った人たちと、手に手を取って登っていくイメージがあります。

そういう発想に行くのは、たぶん僕のルーツが 「ものづくり」にあるからですね。僕は東大阪の出身なんですが、東大阪は町工場がひしめく古くからの工場街です。ものづくりをしている空気を吸って育ち、僕自身もずっと何かをつくって遊んでいました。親戚には商売人が多いんですね。商人というのは、単純に金もうけをするだけでいいかというと、そうでもないんですね。特に「近江商人」には、売り手よし・買い手よし・世間よしという「三方よし」の精神がありまして、伊藤忠や丸紅などはその流れをくむ企業ですが、自分たちの利益ばかりを求めるのではなく、お客様に喜ばれて、それが世の中にも役に立つという考え方を、小さいころから肌で感じていた気がします。だから、起業するときも、社会的意義や自分たちがやる意義についてよく考えました。

●キャリアを考える上で、すごく参考になりそうな発想です。

「グーグルX」開発責任者のアストロ・テラーが、「ある事柄を現状より10倍よくするほうが、10%よくするよりも実は簡単なことがある」というようなことを言ったんですが、僕自身もムーンショット(アポロ計画の月面着陸)のような一見実現不可能な、けれど夢のあるアイデアにわくわくするし、やってやろうという気持ちをかきたてられますね。

自分のマーケットバリューを在職中につけること。その自信があれば、ためらうことはないと思います。

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●独立に際して悩んだことは何かありましたか?

ヒト、モノ、カネという、いわゆる起業に関して必要と思われているものは何も持っていませんでしたね(笑)。ただ、それ以前に、僕の中で「独立するなら、元いた会社、いまいる会社から、確実に必要とされる人材になっておかなくてはダメだ」というのがありました。人材としてのマーケットバリューがあれば、起業に失敗しても、門戸を開けてくれる会社はあるだろうと。逆に、いまの会社や仕事がイヤだから、というような後ろ向きの独立や転職は絶対にやめようと思っていました。

●パワフルですよね。ところで、稲田さんの余暇は……。

総合格闘技やトライアスロンが趣味と言えば趣味ですね。仕事でも体が資本だと考えています。たまに呼ばれると、今でもDJもやらせていただいています。

●文武両道では収まらず、本当にマルチな才能ですね。スーパーマンのようです。

いや、むしろ失敗しまくっていますよ。失敗すると課題が見えて、修正してきた結果がいま、という気がしています。

●最後に、この記事を読む20代の転職希望者にメッセージをお願いします。

中小企業が大企業に負けないイノベーションを生み出せる時代です。転職するなら、看板の大小に惑わされず、そのチャンスをつかまえて、大きなチャレンジをしていってほしいですね。リスクを取らないことがリスクというのは、本当にそう。いまだと思ったときにはバットを振り切ってほしいです。

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著者情報

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三浦 天紗子
ライター・ブックカウンセラー
東京都生まれ。女性誌、文芸誌を中心に、インタビュー、文芸、医療、ビジネスコンテンツ関連の執筆、編集を務める。
『anan』『CREA』『Domani』などでBOOKやCOMICのページを担当。
著書に、『そろそろ産まなきゃ 出産タイムリミット直前調査』(CCCメディアハウス)『震災離婚』(イースト・プレス)などがある。