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【鍼灸美容研究所】「出版印刷営業のスキルをもつ鍼灸師」だからできること。~輝き人 第9回~

鍼灸美容研究所 こきゅう南青山 院長 土井 ひろこ さん

プロフィール

群馬県前橋市生まれ。短大を卒業後、大手印刷会社へ入社。出版印刷営業として14年勤務し、2006年、鍼灸師の国家資格取得を目指し退職。専門学校へ通い、国家試験に合格後の2009年、鍼灸院を開業する。厚生労働大臣認定資格 はり師・きゅう師。株式会社コンフォートジャパン、刺さない美容ハリ「アキュライズ」開発顧問。介護施設「ステップパートナー白金」顧問。董氏奇穴 龍門針灸医学 王医塾所属。内科医・薬剤師・国際中医薬膳師・鍼灸師で構成する女性4人の医療チーム「からだ想いCafé」としても活動。

事業内容

鍼灸美容研究所 こきゅう南青山

スタッフは全員女性で、鍼治療が初めてでも安心して治療を受けられる宮廷式鍼灸院。ごく細い鍼を用いて行われる治療は痛点に触れにくく、即効性が高いことが特徴。「美」に特化した治療も充実し、人工的に加工するのではなく、各々が本来持つ力を引き出し、身体の中から若返ることを目指す。美容機器メーカーとともに開発した“刺さない美容ハリ「アキュライズ」”を、2014年10月、ビューティーワールドジャパンウエストにて発表し、全国販売をスタート。北海道から沖縄までの全国のエステサロンに導入され、好評を得ている。

人間関係の構築にテクニックは不要。「真心が一番」と気づいた会社員時代。

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●大学ご卒業後は大手印刷会社に入られたそうですが、志望されたきっかけは?

印刷や出版業界に興味を抱いたのは、大学の講義がきっかけです。のちに就職することになる会社の方が、編集デザインの講師として来られて、興味本位で受講してみたらすごく楽しかった。それを機に専門学校にも通い始め、出版業界って楽しい! という思いを深めていきました。編集さんになりたいという気持ちはなかったのですが、出版・印刷業界でものづくりに携わりたいな、と。

●無事に希望どおりの進路へ進まれたのですね。仕事は楽しかったですか?

大手出版社や医学書を扱う出版社を担当し、単行本や月刊誌のディレクションをするのが主な仕事でした。とても楽しかったですね。編集さん、作家さん、写真家さん、工場のおじさま方まで、とにかく人と接する機会が多く、そこに生まれる人間関係が私にとっては特に魅力的に思えました。信頼関係が築かれてくると“土井さんのためなら”と無理を聞いてもらえることもあったりして(笑)。皆さんの協力のもと、難しい仕事を成し遂げられたときの達成感がたまらないんです。会社、お得意様とも、良い方が多く、人間関係には本当に恵まれました。振り返ると、良いことしか思い浮かびません。

●もともと、人間関係を築いていくことが得意だったのですか?

種明かしをすると、人間関係の本を何十冊と読みました。書いてあることを実践してみると、あ、ほんとにそうなる!って。大人の方たちはきっと“この子は、どこかで読んだことをやっているね”と、わかった上で温かい目で見守ってくれていたのでしょうけれど(笑)。そのうち、人間関係を築くのにテクニックなんて要らないんだ、真心と誠実さが一番、と気づき始めました。いろいろ試しながらシンプルに削げていく過程そのものが充実していて、楽しかったですね。

●真心にもとづく振舞いが、結局、ハウツー本に書いてあることと重なることも多いですよね。

そうですよね。とにかく、嘘をつかないのが一番。特に立場ある方こそ、人を見抜く目をお持ちなので、後ろめたいことを言ってる傍から、もうバレている。逆にいえば、そのままの自分を出せていれば、怖いものはないと思うようになり、どんなに偉い方と接しても緊張しなくなりました。自分以上には絶対なれませんから、しょうがないや、と気楽に構えています(笑)。

●鍼灸師の国家資格を目指されたきっかけや動機をお聞かせください。

35歳で退職するまで14年。仕事は楽しかったので、できればやめたくありませんでしたが、転職を考え始めた一番の理由は、やっぱり体力面ですね。ずっとこのままのペースで仕事をするのは難しいかなと思い始めたころ、周りを見回すと、婦人科の病気になって退職していく女性が非常に多かった。私自身も、婦人科系のトラブルを抱えていたのですが、病院に通ってもなかなかスッキリ解決しませんでした。

●それで、鍼灸師の道にご興味を抱かれたのですか?

いえ、当初はまったく頭になく、普通の会社勤めを前提に転職を検討していたんですよ。婦人科系の不調に関しては、転職とは別の話として、鍼に通いたいなぁ、でも遅くまで開いているところがないので通えないな、などと考えていたのですが、ある日、それなら、自分が鍼灸師になってしまおうかって、ふと思ったんです。もともと、10代のときに患った顔面神経麻痺が鍼治療で治った経験から、鍼には絶対的な信頼を寄せていましたが、思いついた後の動きが自分でもびっくりするぐらい早くて。あれはもう“ピンときた”としか表現しようがありません。すぐ学校に申し込んで資料を取り寄せて、会社に退職の意向を告げ、引継ぎにも十分な時間をかけてと、とんとん拍子で運びました。

●鍼の魅力を教えてください。

顔面神経麻痺を患った当時、住んでいた学生会館のオーナーが開業医をされていたご縁で、最初は大学病院に通いました。ところが、まったく治らなくて。見かねたオーナーの先生が、ご自身が通う鍼灸を紹介してくださいました(笑)。行ってみたら、初回でいきなり麻痺が解消し始めて、これはすごい!と。

先生いわく「西洋医学も素晴らしいけれど、まだ数百年の歴史の中で全部が進んでいるわけではなく、解明できていない部分はたくさんある。一方、東洋医学は何千年という歴史の中で築き上げてきたもの。顔面神経麻痺のような原因がはっきりしない症状には、東洋医学のほうが効くこともあるんだよね」。それぞれ良い部分があるので、上手に使い分けるのが、今の時代、賢いね、と教えられました。退職後、毎週鍼に通うようになったら婦人科の不調もすっかり改善されましたし、東洋医学で補えることがもっとあるのでは、と可能性を感じています。

「学ぶべきだからそこにある」。目の前のことに真摯に取り組めば、自ずと道は開ける。

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●鍼灸院を開業するにあたり、ご苦労されたことはありますか?

最初から開業を目指していたので、学校に通うあいだも、勉強を兼ねて相当準備をしました。学外の勉強会に参加するだけでなく、「学生美容鍼灸チーム」を主宰して活動したり、知り合いに声を掛けて練習させてもらったり。そのかいあってか、鍼灸院を立ち上げたときには潜在的な患者様がかなりいらっしゃって、ありがたいことに最初からわりと繁盛していました。

特に運が良かったと感じるのが、台湾に伝わる宮廷式鍼灸との出合いです。清朝の時代から宮廷の主治医を務める家系の十代目、王泰龍氏に師事し、日本では数十名しか許されていない“王家に伝わる秘技”ともいえる治療法を伝授していただきました。早い段階で、古い鍼の世界と新しい美容鍼灸の両方に触れることができたので、現在のバランスのよい営業スタイルに結び付いたと思います。

●お仕事を通して、実現したいのはどのようなことですか?

東洋医学を身近なものとして捉えていただくために、一役買えたら嬉しいですね。最近“刺さない美容ハリ「アキュライズ」”に関する冊子を、一から十までディレクションして作成したんですよ。当初は私が主導する予定ではなかったのですが、なにしろ冊子制作のディレクションには慣れていますので(笑)。

ほかにも、会社員時代のプレゼンの経験が、セミナーでお話させていただく際の声の張り方から話の組み立て方まで、大変役立っています。企業さんから商品開発や技術提供のお話をいただくことも増えてきました。前の会社で働いていてよかった、と思うことが多いです。優秀な鍼灸師さんが大勢いらっしゃる中で、私に求められる部分があるのなら、どんどんやっていきたい。社会人として経験してきたことがこんなふうに繋がるのか、と感慨深いです。

●20代のうちに、やっておくべきことがあれば教えてください。

20代を振り返ると、無意味な時間を浪費していたときもあったし、語学もやっておけばよかった等々、思うところはたくさんあります。ただ、よくよく考えると、あの時間は必要だったよね、と思うんです。20代って、すごく多感で、吸収力も今と全然違いました。それゆえ、些細なことを大きく捉えて悩んでしまうときもあるし、迷って無駄な時間を費やすときもある。でも、今よりずっと“濃く”何かを感じていたんじゃないかな。悔しかったり、悲しかったり、自分のさまざまな感情を存分に味わって、かつ、多くの人の感情を知っておくことはすごく大事。そのことが、のちに、人を受容できる幅やコミュニケーションスキルに繋がると思います。

●仕事や会社選びに迷いが生じている人々へ、メッセージをお願いします。

適性を見極めるとか、好きなことを見つけるとかって、よく耳にしますが、実際はそう簡単じゃないですよね。焦らずに、目の前のことを一生懸命やれば、自ずと、道が開けてくることが多いような気がします。なにごとも、経験せずに好きかどうか、合うかどうか、知ることはできないじゃないですか。ならば、ひとまず今あるものに真摯に取り組む、というのが一番の正解かも。

例えば、転職活動も人生においてめちゃくちゃ貴重な経験。取引先以外のさまざまな企業に触れられる機会なんてそうそうないですもん。企業の情報を真剣に集めるということも素晴らしい経験です。焦ると感性が鈍っちゃうので、好きなものを見つけたつもりでも、実は違ったなんてことも少なくありません(笑)。どんなことからでも学ぶことは必ずあるので、「学ぶべきだからそこにある」と都合よく考えて、取り組んでみてはいかがでしょうか。

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著者情報

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生駒 奈穂子
新潟大学卒業後、電子部品メーカーの営業部門、化粧品通信販売会社の販売企画部門、フリーランスのパーソナルコーチを経て、ライター業へ。美容・健康・カルチャー・ファッション・インタビューなど多分野の記事を執筆。現在は、企業や大学の各PR媒体を中心に活動中。好きなものは猫、お笑い、ラーメン、ビール。